■長器械各部分の名称(槍)
刀刃 刃が付いた切れる部分、刃の部分は湾曲している。
刀穂 大刀には刀彩ではなく剣に付く穂のような物や槍の纓などが付く。
刀盤 別名護手盤と呼ばれる、相手の攻撃を受け止める鍔。
把尖 環状の物も有る、尖った物は地面に突き刺すことが出来る、また刀刃を切り落とされたときの代用にもなる。
槍頭 刃が付いた突き刺せる部分、長いものは「矛」に分類される。
槍纓 槍の装飾物、古くは刺したときに敵の血を防ぐもの。
槍杆 槍を手で持つ部分。
槍把 槍の最后段の部分、ここで打ち付ける攻撃法もある。
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古くより棍は「棍為芸中魁首」つまり棍は武芸のさきがけ、武術の始まりは「棍術」であった有ったとされています。
格闘(戦争)の歴史を調べると、原始の戦ではすでに人々は石や棍棒を持ち、打ちあっていました、素手の戦い方の
体系以前に、武器による戦いの体系があったと思われます。
武器の中で、単純な木の棒である「棍」はとても基本的な武器です、武術で有名な少林寺でも、最初から「少林拳」
があったのではなく「始まりは少林棍にあり」とされています。
長拳で使われる棍の素材には、粘り強く折れにくいバットなどでも使われる「トネリコ」の一種である「白蝋杆」が
使われています(画像 1)それに比べて「猿棍」で使われる棍は、套路中に「棍」によじ登るというユーモラスな動
作もあるため金属製の物を使います(画像 2)。
一般の「棍」は先が細く、根元に向かって太くなっていきますが同じ太さの「棍」の両端の先だけ削り尖らせた「双
頭棍」などもあります。
棍の扱い、基本技術については以下で解説しています。
棍術の基礎知識1 棍術の基礎知識2 棍術の基礎知識3 棍術の基礎知識4 棍術の基礎知識5
梢子棍は長器械と同時に軟器械にも属する器械です。長い棍と短い棍を鎖でつないだものです、元々は米など穀物を
脱穀する「殻竿」から発達した物と考えられています。また梢子棍には棍の長さが短い「短梢子棍」もあります。長
棍が約40cm、短い棍が20cmほどのものです。
「槍」と言えば、器械対練でよくおこなわれる組み合わせに「朴刀対槍」があります、一見大きな刃の「朴刀」を持
つ方が強そうで「槍」をいたぶるように思ってしまうのですが、「槍」のもなかなか強くて負けていません。
状況にもよりますが「槍は百兵の王」と呼ばれるように「器械」の中では「槍」の攻撃能力はかなり高いと言えます。
「槍」の構造は単純です「棍」の先に小さな「剣状の刃物」をつけただけの物です。「槍頭」の根本には赤い「槍嬰」
が付いています「槍嬰」とは馬の毛で出来た房で返り血を受けるためとの説明があります。
「槍」の構造は単純ですが、使い方は複雑で高度です、槍の技法には「拦・拿」など纏糸勁を用いた用法があります。
剣の扱い、基本技術については以下で解説しています。
槍術の基礎知識1 槍術の基礎知識2 槍術の基礎知識3 槍術の基礎知識4
双頭槍は二つを持ち「双頭双槍」という套路を行う器械です。長器械の中では比較的短く槍杆も細いことが特徴です。
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「朴刀」は短柄の「環刀」と同じ刀刃に長い柄が付いた長柄器械で、同じ仲間に柄が少し短い「双手帯」などが有り
ます、「双手帯」は「双手刀」とも呼ばれています。朴刀の「朴」とは素朴という意味からも伺えるように、比較的
単純な構造をしています、刃と反対側の端の「刀把」には「刀環」が付きます。
朴刀は対練などでもよく使われ、長柄刀の中では比較的軽く扱いやすい刀と言えます。
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「大刀」は長器械の代表的な器械で、刀把の先に大きな刃が付いています、「大刀」には多くの別名があり「青龍偃
月刀」「青龍刀」「春秋刀」「関刀」とも呼ばれ「三国志の関羽」が持っていたことで有名です、もっとも関羽が活
躍した時代には「大刀」はまだなかったという説が有力です。
「大刀」タイプの器械は数多くあり「朴刀」「双手刀」「鷹頭刀」「象鼻刀」などがあります、その中でやはり「大
刀」が一番重量があり、自在に扱うにはかなりの「功夫(実力)」が必要でしょう。
「大刀」を扱うには「大刀看定手」と言う言葉があります、定手とは「護手盤」の下側を持つ手の事で、その部分を
うまく使うことが「大刀」を扱うポイントであるということでしょう。
刀刃は長さ約56センチで大きく湾曲し、最大幅が約25センチと大きな刃です、また刀背の部分に鈎鎌(鎌状の角)
があり刀穂が付く事もあります。全長約は1.9メートルで、刃と逆の方には把尖(槍先のようなもの)か「環刀」の
刀首と同じ鉄の環がつきます。
大刀(画像 1)に比べ青龍偃月刀(画像 2)は装飾された物が多くこの二つは区別されることもあります。
中国の昔話には「蛇足」や「矛盾」など有名な話がたくさんありますが、矛はその「矛盾」の話に出てくる器械です。
昔、楚の国に「矛・ほこ」と「盾・たて」を売る商人がいました。商人はこの「矛」は強力でどんな「盾」をも打ち
破ることができる、そして私の「盾」はとても丈夫なのでどんな「矛」で突かれても防ぐことができると自慢してい
ました。それを聞いていた見物人に「それでは、その矛でお前の盾を突いたらどうなるのだ」と問われても答えられ
ず、こそこそと逃げ帰ったというお話です。[韓非子難一]
「盾」については「防守器械」なので後にゆずるとして、ここで登場する「矛」とはどんなものだったのでしょうか。
「矛」は別名「刺兵」とも呼ばれ「槍」よりもさらに長い刃が先端に付いています。そして「蛇矛」ですが、「三国
志」の英雄「燕人張飛」の「丈八蛇矛」が有名です。その長さは丈八尺と言うことですから、現代の長さにすれば約
4メートルで、これを馬上で振り回したというのですが、現実的ではありません。
その形は「剣のブース」で紹介した「蛇剣」によく似た少し小振りの「矛先・ほこさき」が「棍」の先に付いていま
す。「矛」の仲間には「棍」の両端に同じ「蛇矛の先」が付いた「双頭蛇矛」などがあります。蛇足ですが日本で「ほこ」と言えば「鋒・戟・槍・桙」とも書き、鎌倉時代以降に「薙刀・なぎなた」に変化してい
きました。
「月牙铲」は「西遊記」の沙悟浄が持っていた器械として有名です。「月牙铲」は別名「禅杖」や「錫杖」とも呼ば
れ、もともと仏教の僧が使う仏具(河南省少林寺系)から変化した武器で、全長180センチほどの長さです、沙悟浄
は僧の格好をしていることも納得できます。
「月牙铲」の形は、片端に三日月形の刃が付き、逆には平らなスコップの先が付いていると思ってください。その刃
の所々に金属の輪が付いていて振ると、金属音が鳴ります。
昔々戦火の激しい中国では、遺体があちこちに転がっていたそうです、それを見た少林寺の僧が凍てついた地面を月
牙産で堀って墓穴を作ったと言う話です。铲とはシャベルと言う意味があります。
僧侶が持つ法具である「錫杖」から変化した器械です。咲に紹介した「月牙铲」も「禅杖」と呼ばれることが有りま
すが別のものです。もともと「禅杖」は托鉢に出る僧が持っている杖です、ただ器械になると形がデフォルメされま
るでキッチン用品の泡立て器のような形です。
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「戟」の種類には「単戟・青龍戟」「双戟・方天戟」「蛇戟」などがあります。「方天戟」は先に紹介した「矛」の
両側に「月牙」が付いた器械で三国志の「国士無双・呂布」の武器でとして有名です。技術的には、先端の「矛」の
部分で突き刺す、サイドの「月牙」で切り裂く、というように「大刀」系と同じような攻撃法ですが、「月牙」は両
側に付いているため多角的な攻撃力ができます、また「大刀」に比べ、重量はかなり軽いため自在な取り扱いが可能
となります。
中国武術における器械発達の典型がこの「方天戟」ではないかと考えます。それは始めに「矛」という器械がありま
した、その刃の部分に「月牙」を付ければ戦闘力が上がると考え「月牙」を一つ付けて「単戟」が出来ました、それ
を使ってみると使いやすく強力だったので、次に「月牙」を二つ付けて「方天戟」が生まれました。
中国武術の器械にはこのように順に器械を並べていくと、その器械の変化発達してきた歴史が一目でわかるように思
えます。
「九環刀」には長器械の九環刀と短器械の九環刀があります。長器械の「九環刀」は「朴刀」の刀背に穴が九つ並ん
であき、金属のリングが九つ付いています、そのため「九環刀」を振ると刃に付いたリングにより音が鳴る刀です、
騎馬戦では敵の馬の耳元で「九環刀」を振り、大きな音で相手の馬を驚かし敵がひるんだ隙に攻撃するというもので
す。その場合自分の馬が驚いてはだめなので、戦いの訓練の時には自分の愛馬の耳元で「九環刀」をガチャガチャと
鳴らして訓練をしている、武将の姿があった事が想像できます。
刀の基本的な形は片刃ですが、この「三尖両刃刀」は刀に分類されますが両刃がついた器械です、形は「山」の字に
似ていて先端が三つに分かれています。
「三尖両刃刀」はその形から技法は「槍術」や「大刀術」併せ持った技術があります。また「三尖両刃刀」は西遊記
の中ので「顕聖二郎真君」が持っていた器械でもあるので「二郎刀」とも呼ばれています。また「水滸伝」の「九紋
竜の史進」の器械でもあります。
「大刀」よく似た物です、資料によれば「大刀」の項目にこの「象鼻刀」のイラストを載せている場合もあります。
象の鼻と言っても長い鼻の形をしているわけではなく、象が鼻を丸めた形に似ています。地上で一番大きな動物の力
強さを表現した物でしょう。
この器械も「大刀」と同じようなものですが、刀を立てたとき刃が鷹を横から見た姿に見えます。刃に嘴や目、翼な
どを描いた物も有ります。
「鷹頭刀」もそうですが「象鼻刀」などは、鷹好きや象好きの武将が作らせたが、いざ使ってみたら案外使いやすく
現在に受け継がれているのではないでしょうか。
「三叉」は一目で農器具から発展してきた器械と分かります。先端がフォーク状に三つに分かれて、農器具の藁をす
くいとる道具の「三つ又」そのままの器械と言えます。「叉」の仲間には三本の刃の外側の部分が少し広がった「河
叉」、同じところが内側に向いている「牛頭叉」、髭のように波打って広がっている「龍髭叉」などがあります。
斧は昔からいろいろな用途で使われてきた器械(道具)です。もともと、斧は森林を切り開いたり、兵舎を作ったり
する、工作用の道具から兵器に応用されて来ました。斧が使われだした初期の頃は、城壁を壊したり堀を掘ったりす
る戦闘補助器械として使われてきたのですが、しだいに儀仗用に装飾された「金斧」(黄鉞)などが出現してきます。
さらに時代が進み、刀や剣など刃の薄い器械では文字通り刃が立たない重装備の甲冑の出現してきます、そこで破壊
力の大きな「大斧」の再登場となり、金属製の装甲の上から叩きつぶすように振り下ろしダメージを与えるという攻
撃が可能になりました、そして小型の銃火器の登場まで戦闘の主役の一つとして活躍します。
一般に「大斧」は2m 程度の柄ですが、5m の柄が付く物もあります。斧の別名である「鉞・えつ」には単に「斧」
の大きな物を指す場合と装飾を施した儀仗用の「斧」の事を指す場合があります。
狼牙棒は打撃器械で「錘」の一種と言っていいでしょう、木製または金属製の土台に狼の牙のような鋭い金属製の棘
を植え付け、それに木製の柄を取り付けた物です。
この器械も刀や剣では刃の立たない鎧を着た兵士に対し鎧の上から打ち付けダメージを与える物です。錘などの重さ
だけで打ち付けたときと違い、たくさんの「狼牙」が有るためより大きなダメージを与えることが出来ます。
水滸伝の中では霹靂火(へきれきか)の秦明(しんめい)が狼牙棒の使い手としています。また余談ですが、西洋の
武器ではモーニングスターが狼牙棒と同じ種類の物と言えます。
この武器は片方に月牙铲の铲、もう一方は龍髭叉に似た鎲が付いています。大きく幅があり重量も有るこの武器は大
刀と同様、体格の良い力のある者が使っていたと思われます。
耙の一種で少林門の古重兵器に属します。熊手や馬鍬など農機具から変化した器械です。
古代の戦いにおいて、歩兵が用いた騎馬兵に対抗する器械です。斬馬刀にはこの形以外にも苗刀のような長刀の形の
刀があります。どちらも共通することは離れたところから攻撃できることで、馬に乗った敵に斬りつけることも有り
ますが主に馬の足を狙った攻撃に用いられたと思われます。
まるで巨大な棒付きキャンディーのようですが、打撃器械に属するものです。この金瓜錘も大斧と同じく甲冑ごしに
攻撃する器械と言えます、元々はただの棒に尖端に重り(錘)を付けることにより攻撃力を上げた物と伺えます。
錘は木の塊またはその木の塊を金属で覆った物などが有ります。狼牙棒もこの仲間と言えます。
古代兵器の一つです。よく似たものに鳳翅鎲などがあります。中心に長い矛状の物があり、その横にギザギザの歯の
付いた翼状の刃が付いています。尖端で突き刺す、側面に出た翼状の物で打ち付ける、甲冑や衣服を引っかけるなど
用法には刺、挂、扎、鋸、架、蓋、挑などがあります。
長器械の一つ。別名「南方大扒」とも呼ばれ、北方では「鋼叉」と呼ばれています、明代では「钗钯」といろいろな
名前で呼ばれていました。先に紹介した「三叉」と同じ仲間で農機具から発展した器械です。大钯の技法には圧、撩、
拍、吐、鎖、舞花などがあります。
钯の一種、钯頭には九個の小さい歯が有ります、これも元々は農機具や路を造ったりする工具だった物です、この器
械は西遊記に登場する猪八戒の持つ武器として有名です、猪八戒の武器は九の歯ですが七個や十一個のはの付いた钯
も有ります。用法には擂撃、撞撃、筑撃、反撃、格、架、挑、撥等です。
中国の物語で一番有名かも知れない「西遊記」玄奘三蔵が猿の孫悟空、河童の沙悟浄、豚の猪八戒を引き連れて、天
竺までありがたい教典をもらいに行く、その途中で妖怪などの悪者を退治して行くという、勧善懲悪の物語です、京
劇や映画などでも定番になっている話です。
中国が舞台だけにその主人公が持つ器械も中国武術の器械です。三蔵法師の持つ物は「錫杖」または「禅丈」と呼ば
れる物で、托鉢に出る僧が持っている杖です。孫悟空(孫之行者)はもちろん「棍」、悟空の持つ物は自在に伸び縮
みする事になっています。猪八戒は「九歯钯」、沙悟浄は「月牙铲」です、「月牙铲」は別名「禅丈」とも呼ばれま
すが、三蔵のもつ「禅丈」とは区別されます。